「不動産をもっともっとクリエイティブに」株式会社ストックデザインラボ 北嵜剛司さんインタビュー
こんにちは、福岡のホームページ制作シンス株式会社の越水です。
今回から「福岡の街をより元気にしていくプレイヤー」にスポットを当てる、インタビュー企画がスタートです!
インタビュー第1弾は、不動産のリノベーション・再生という分野で活躍する株式会社ストックデザインラボの代表取締役、北嵜剛司さんにお話しを伺ってきました。
目次
不動産ブランディング事業について
越水:まずは現在のお仕事内容について教えてください。
北嵜さん:リノベーションを主軸に、物件の再生企画やプロモーションを含めた不動産ブランディング事業をしています。
越水:不動産の再生、ブランディングですね。そこに関わるようになったきっかけは何ですか?
北嵜さん:幼い頃団地で育ったというのもあって、1970年以前に建てられた古い建物が好きだったんですよね。鉄で作られた冊子やドアノブの形状、レトロでかわいい照明器具とか。また建物全体から出てくる雰囲気、例えば年代問わず和気藹々とした自然なコミュニティとか。
でもだんだんと、団地って子供が少なくなって活気がなくなっている。そんな状況を見てなんとかできないかなぁと大人になってからの想いがあって。
越水:育った環境が大きく影響しているんですね。
北嵜さん:そうですね。前職の業務を通じて、そうした古い建物が持っている魅力を活かして物件を再生できるとわかって、それを仕事として頑張っていきたいと気持ちが強くなりました。
ストックデザインラボを2016年9月に設立して今に至ります。
古い建物だからこそ感じる面白み
越水:市場環境や消費者の変化から、不動産の再生やリノベーションに対する追い風を感じますか
北嵜さん:そうですね。モノを見る価値観が少しばかり変化しているように思います。
新しいとか古いとか、ブランド品なのか量産品なのかではなくて、自分自身にはまっているのがいい、みたいな価値観がだんだん根付いていて。それもあって古い建物が自分にはまっていて好きだという人たちが増えてきたり。あと、もともと住宅の用途として作られたものが別の用途で使われたり、利用方法が多様化しているのは感じます。
そこで敏感なオーナーさんや事業者さんは、その変化に合わせて建物の見せ方や利用方法を変えていってます。そこをただ古くて価値もないと思っているオーナーさんの建物は愛着が注がれていないせいか、散らかっていたりして、空室が多かったりします。
越水:利用方法の多様化とは?オフィス利用などですか?
北嵜さん:ですね。この辺(中央区・博多区)では多いですよね。住居として使っても、スモールオフィスとして使っても良い物件。ホームオフィス的な感じで住みながらそこで働くというケースもあるし。
越水:このオフィスもオシャレで良いですよね。
北嵜さん:ありがとうございます。なんか箱自体がちょうど良いと言うか。3、40平米ぐらいの物件がこの辺は多いので、最大スタッフ3、4名くらいのスモールオフィスとして使いやすい状況です。
あと、会社の世界観を表現するという意味で、古い物件をリノベする、してるのを借りるってのは増えています。
越水:最初からそうしたニーズを持った入居者さんがつくように狙ってリノベーションをしたり、建物を再生させるのですか。
北嵜さん:そうですね。エリアごとにこういう需要があるかどうかリサーチします。建物のコンセプトやオーナーさんの収益状況などと合致するかも大事なので、実際は諸々のことを組み合わせて考えます。
例えば一室作ってリリースしてみて、反響を見ながら少し方向性を変えてみたりしながら建物の隠れた魅力を見つけ出す必要があります。なのでフレキシブルに変化できる余白をもっておくことを大事にしています。
越水:違ったら変える。
北嵜さん:建物に関する情報発信の仕方だったりします。
極端な例ですが、最初は住居的な切り口で発信するけど、反応がないなと思ったらオフィス的な切り口に変更してみるとか。実際に部屋に手を加えてコンセプト変えてみるということもありますね。
方法は様々ですが、そうした方向転換が可能な余白を用意しておくことが重要です。
この作業の繰り返しが、物件の魅力を引き出し、形にしていくプロセスだと思います。この作業無しで一気に大きな投資をして形にしてしまうのは、オーナーにとって大きなリスクになりますし。
越水:そうした客付けのことまで考えて再生してくれるのは、賃貸経営されるオーナーさんとしてはありがたいですね。
コミュニティマネージメントとエリアブランディング。
越水:コミュニティマネジメントとエリアブランディングもされると伺っていますが、どのようなことをするのでしょうか?
北嵜さん:コミュニティマネジメントは、僕の捉え方としてはつながり作りのサポートですね。交流のサポートです。
越水:具体的にいうと?
北嵜さん:例えば北九州市の小倉北区の住宅地「ボン・ジョーノ」でタウンマネージャーとして2016年から2年間コミュニティマネジメントのお仕事をさせていただいていました。
このボン・ジョーノでは「シェアタウン」をキーワードに、ただ寝て帰るベットタウンではなく、暮らしや活動を楽しみながら、自分たちでまちの魅力を生み出し、未来につなげるような取り組みをしています。
そうしたコミュニティに必要な場作り、イベントの企画や調整役を行っていました。
越水:具体的にどんなことをされていたのですか?
北嵜さん:住んでいる地域で楽しく過ごしたいとか、地域活動がしたいとか、いろんな興味や関心が潜在的にあります。
そこを汲み取りながら企画やイベントの準備などを繰り返していって、プロセスを共有して、最終的には当事者である住民さんたちが自走できるようにサポートする。こんなことがありますよ、こんなことできますよって、花作りに例えるとしたら種をまいて、少しずつ水を足しながら芽を育てていくような、そういった役割です。
越水:なるほど。エリアブランディングはどういったものですか。
北嵜さん:人に「ここに住みたい!来たい!」と思ってもらうには、建物の魅力を引き出すだけではどうしても足りない部分があります。そんな時は建物がある地域がどんな魅力があるのかということもセットで考える必要があります。
自分たちが良いと思った地域情報を積極的に見つけて、発信していくことが大事です。
越水:コミュニティマネジメント、エリアブランディングは不動産ブランディングにどう活きてきますか。
北嵜さん:建物というのはやっぱりその地域が好きとか、近隣の方と交流したいという、人と人の繋がりがあってこそ魅力的に育っていきます。
「つながりとしがらみ」という言葉があるのですが、窮屈になりすぎず離れすぎずという良い塩梅の距離感で、人や地域のつながりを自然な形で生まれるようにすることを意識しています。
コミュニティマネジメント、エリアブランディングを通じて人の交流や情報の発信が行われるので、結果として建物のブランディング価値が向上していきます。
多種多様な不動産再生プロジェクト
越水:コミュニティづくりや地域のブランディングにも関わるのは、施工だけ行うリノベーション会社とは異なる部分ですね。今進行しているプロジェクトで特徴的なものがあればいくつか紹介してください。
北嵜さん:北天神エリアでMaruhachi(マルハチ)というプロジェクトがあります。
周辺にあるのはボートレース場と立ち飲み屋で、ボートレースがない時は人通りが少ないエリアでした。そこに元々あった質屋さんを、スモールオフィス&アトリエとして利用できる建物へとリノベーションを行いました。
北嵜さん:天神界隈のコワーキングスペースはけっこう騒がしいし、オープンなスペースで働ける人達ばかりでもありません。マルハチは周辺が静かなので、意外と自分のスペースをもって集中して仕事するのに向いています。そうした建物ができることで地域に新たな人の流れも生まれます。
今はそのプロジェクト内でコンセプトづくりや、Webコンテンツやイベントの企画をさせてもらっています。
越水:周辺にボートレース場と立ち飲み屋、と聞くとオフィスの需要があるのかな?と思うのですが。
北嵜さん:逆にそこを魅力的に感じるような人たちが集まり動き出すことで、エリアの空気感は時間と共に変わっていきます。
ある意味独特な色はついていますが、未開拓で面白みがあるエリアなので、そうした余白たっぷりの場所にオフィスやアトリエを構えるぞっていう価値観を表現するにも良いんですよ。
越水:他にはどんなプロジェクトがありますか。
北嵜さん:大洋荘という物件の再生プロジェクトがあります。
もともと企業の社員保養所として使われていて、大きい芝生と二階建ての宿泊できるスペースがある建物です。
北嵜さん:1年目はそこをアートという切り口で展開しつつ、トライアルで一棟宿泊で使ってもらったり、小学生の絵画合宿や、アーティストに1ヶ月滞在してもらって作品制作や展覧会をしてもらったり。また、この地域で生活されているクリエーターさんにウィエディングパーティーの会場としてでご利用いただいたりしました。
越水:ウェディングパーティーですか!面白いですね。
北嵜さん:古くなって空き家になった建物ですが、いろんな人がその空いている空間をどう使おうかと発想して、それぞれのアイデアで利用してもらっています。
そこをサポートしていくことが僕らの大事な仕事だと感じます。
その発想が広がって「地元の空き家をこんなふうに使えるんじゃないか?」と考える人がでてきて、また別の場が動き出す。そういう意味ではやりがいのある仕事です。
あまりこちらが使い方を決めてしまうのではなく「ご自由にどうぞ」というスタンスのほうが面白いんじゃないかなと思います。
これからの不動産ビジネスの環境変化について
越水:少子高齢化で賃貸住宅の借り手も減ってきます。不動産再生ビジネスにどんな未来が待っているかというビジョンがありますか。
北嵜さん:借り手は減りますが使い方の多様性はさらに増す、と思います。
空き家や空きスペースを素材と考えて、それを活かして何しよう?と考える発想が大事です。世の中全体でその視点が磨かれてきているからこそ、こうしたストック物件が動き出している。
僕たちはそのつなぎ役で、「こんな使い方ができる場所があったらいいな」という方と、「こんな物件があるんだけど」という方を引き合わせたり調整する。
目利きも必要ですが、そこにビジネスのチャンスがあるのかなと思います。
越水:住居とは別に、好きなことをやるための部屋を借りる人もこれから増えてきますか?
北嵜さん:そう思います。ある意味、一人あたりが使える面積が広くなってきますからね。
1年に数回しか使わないけど魅力的で贅沢な場所を無理なく持てるチャンスも出てくるかもしれません。
また、AIのようなテクノロジーの進化も今後大きく影響してくると思います。
越水:その中でどういうポジションを作っていきたいですか。
北嵜さん:僕は設計・デザイン会社の分野の中で、企画やデザイン、発信・プロモーションとか、特に不動産や建築再生を得意とするポジションになっていきたいと思っています。
一般的な不動産会社さんが一社ではできなかったところをサポートしていくことで、物件や建物自体が良くなっていくお手伝いができればと考えています。
越水:賃貸経営のことも考えつつ、物件のプロモーションやブランディングをやってくれる。
北嵜さん:そんな感じですね。一部自社でも建物の運営をやりながら、そこから得たノウハウを活かして不動産オーナーや管理会社などが行う物件運用をサポートしていく。
Webや刷り物を使って発信したり、その物件がどのようなポテンシャルを持っているかを表現していく部分を担えればと思います。
不動産をもっともっとクリエイティブにする
越水:経営理念はなんですか?
北嵜さん:「私たちは不動産ストックの活用を通じて人・建物・時間をつなぎ、場が持つ潜在的な価値や魅力を引き出し育てることで地域の活性化に貢献します」です。
越水:長いですね笑
北嵜さん:スローガンである「不動産をもっともっとクリエイティブに」のほうがわかりやすかもしれません。
越水:「もっともっとクリエイティブ」
北嵜さん:「もっともっと」と繰り返している理由は、僕らのコントロールが及ぶ部分だけだと「もっと」にしかならないんですよ。
建物に関わる人たちの想いや、やりたいことが混ざり合ってハプニング的に何かが起こる、それがもうひとつの「もっと」であって、不動産がクリエイティブになる瞬間です。
それを踏まえて僕は方向性を示すだけなんです。
越水:いいお話ですね。もっともっとにはそういう意味が。
北嵜さん:物件の再生は始めからイメージを組み立てすぎると、面白い場所になりません。
古い建物を活かすっていうのは臨機応変に、その場で正直に感じたことや閃きの積み上げでリノベーションする方が面白くなります。
さらに、入居した方が思いもよらない使い方をしてくれているのを見た時に、もう一歩先の面白みがあります。それがこの仕事の魅力かなと思います。
越水:新築物件だとそうした手法はやりづらいのでしょうか。
北嵜さん:新築物件でも可能だと思います。全国的に「つながり」をキーワードとした新築物件も増えてきていています。
これまでの賃貸住宅は白い壁に釘一本打てない、お隣さんがどんな人なのかも分からない、閉ざされた建物が主流でした。「それっておかしくない?」というところから賃貸リノベーションは進みだして、今はDIYがサブカルチャー的に盛り上がっています。
提供する側が不動産管理を合理的にするために出来てたこれまでの賃貸住宅の仕組みが崩れてきて、だんだんユーザー側の住宅に対するニーズや価値観に寄ってきているのを肌で感じています。
どの業界でも似たような話があると思いますが、ユーザー側に編集する権利が移ってきたからこそ、建物自体がより面白くなってきている感じがします。
越水:なるほど。まだまだたくさんの変化が起きそうな分野ですね。
最後に、お仕事をされるうえで大切にしていることを教えてください。
北嵜さん:お客さまと一緒にやっていくというスタンスです。
一方的にこちらから提案したものだけ進めていくとか、お客さまのご要望をただそのままやるというわけではなく、お客さまと成功も苦労も共にしながら一緒に作っていくということを大事にしています。
越水:北嵜さん、ありがとうございました!
おわりに
リノベーションやコミュニケーションツールのデザインを通じて、古い建物の再生・ブランディングを行う北嵜さん。
何かわくわくすることが起きる場づくりのために、あえて余白を持たせた設計・デザインを行うというお話しが印象的でした。
モノで溢れた現代でも、「使えるものを大事に使う」という価値観が改めて見直されているように感じます。
そのなかで北嵜さんのお仕事は、これから益々求められるようになるのではないでしょうか。
リノベーションや老朽化物件再生のご相談はぜひ株式会社ストックデザインラボへ。
それではまた!
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